ツィードシャツ 完成編
ツィードシャツ作成、完成編です
ちょうど10月中旬、こちらのツィードシャツは、代官山セレクトショップDF_TOKYOさん
の別注商品として、工場縫製分の量産品が納品されるタイミングなので、ご紹介としても良いかもしれません
早速ですが
前回のブログで、裁断、芯貼り、パーツ作成(カフス、衿)と言う所まで書いておりましたので、
今回はボディ、パーツの接合など触れていきたいと思います
ヨークは、外側のツィードには、全面芯を貼り、肩にかかる生地の重量に対するダレを防止します(特にハンガー掛け時に。ニット製品と同じく、スポンジなど滑り止めの無いハンガーは注意要)
内側は別布スェードで厚みを軽減。
ダブルネームを縫製後、ヨークを後ろ身頃に挟んで縫います
ポイントは、縫い代幅に段差を付けて、接ぎの厚みを抑える事です。厚みのある生地では、よく行われます。 そして、ステッチ幅の中に、縫い代を収めて、上がりをキレイに。
次は前身頃。
まずは前端の処理。普通のシャツ地では、表前立て、裏前立て等が一般的ですが、
今回のツィードの厚みを考えると、なるべくすっきりさせたいので、別布スェード見返し前立てに。とは言え、釦着脱に対する強度を保ちたいので、スェード、ツィードともに、芯を貼ります
次は、ポケット。前身にフラップ付きのアウトポケット。周囲をロック始末し、ほつれ防止。フラップ裏は別布スェード
前身と後ろ身がそれぞれ出来たら、肩で接合 & 衿付けに。
ここら辺は特に、縫製自体は普通のシャツ地と変わるところはありませんが、「衿付け」はシャツ縫製のポイントになるので、かなり気を遣います
衿付けに関しては、また色々とあるので、次回のブログで触れたいと思います
衿がつくと、残りは、裾始末や袖付け。
今回のツィードシャツは素材の特性もあり、よりアウター寄り、CPOジャケット的な雰囲気にしているので、ディテールもアウター仕様の雰囲気で
胸フラップポケット然り、裾のスリット、袖口もケンボロではなく、接ぎ利用のスリット仕様にしています
折り伏せ縫い始末を広幅10mmに設定し、縫い代部の合わせ面上下に、別布スェードを叩いています
ツィードは糸が太く、ほつれ易いので、ケンボロなど縫い代が細くなる仕様を避けるのが元々の目的ですが、こういうディテールが製品の雰囲気を最終決めていくので、しっかり作り込む必要があります(Gジャンの袖などこの仕様)
最後に、袖付け
袖付けはまず、2つに分かれます(以前にもブログで触れてますが)
①袖先つけ ボディ、袖共にが切り開いた状態でアームホールに縫い付け、後で、袖口から脇裾まで一気に縫うタイプ
もしくは
②袖後付け ボディの脇を縫い、袖の筒を縫い上げた状態で、アームホールを接合するタイプ
一般的なシャツは殆どが ①袖先つけ タイプ 袖山の折り伏せ始末がやり易く、袖口から脇裾まで一気に縫う効率の良さがポイントです
一方
②袖後付けタイプ は、身頃と袖を別々に完成させてから、くっつける縫製で、袖山に角度をつけ「袖の前振り」を可能にします。ナポリ系高級シャツによくみられ、一手間も二手間もかかり、また技術力も求められます
今回のツィードシャツに関して、
ライトアウターとして、ある程度のゆとりがあり、シルエットやパターンを攻めるタイプのシャツでは無いので、普通に考えれば、①で十分なのですが
①でいくと、「袖下と脇身頃の交差部分」の 折り伏せの縫い代の重なりが6重に分厚くなってしまうので、
それを回避するために、
②の後付けで、身頃の折り伏せ部と袖下の折り伏せ部をずらす=結果「前振り」を採用しました
また、アームホールの「折り伏せ始末」になりますが、
こちらも 折り伏せをすることで生地が3重に重なり、特にヨーク部や袖下、身頃カマの折り伏せ部は、4重、5重と重なってしまい
それをステッチで叩けば、アームホール自体が「固く」なってしまいます
ので、今回は、あえて「ロック叩きつけ」で、簡易的に始末を終えました
ここら辺の判断は、どっちが正しいとも言いきれません。生地次第と言えるでしょう
という感じで、ツィードシャツの完成と。
2色展開で、 ブラウンもあります。ツィード柄、風合い が全く違うタイプで、このブラウンはなかなか無いツラ感してますのでおススメです
生地の厚み、組織の甘さによるダレへの芯貼りの対策が、ポイントになるシャツ縫製。
サンプルを縫い、試着もしながら、問題を確認し、解決すべく仕様とディテールを決めていく
1stサンプル、2ndサンプル、改良を経て、やっと製品が出来上がります
購入して頂いたお客様が、喜んでくれたら幸いです