新作ノンアイロン系生地 考察
今回は、最近インスタ投稿とリンクしてブログアップ
デニム×刺し子 後編は また後で。
という事で、新作生地バンチの中から、気になった「ノンアイロン」タイプの生地でシャツを作り
どんなもんか、体験リポート&紹介したいと思います
以前も一度「ノンアイロンシャツ」に関してブログしたことがあり、
その時は日本でノンアイロン系シャツと言えば、
「形状記憶」と「形態安定」という言葉の規定があり、それぞれ「糸」から、もしくは「製品」の薬品加工(ホルマリンや液体アンモニア)によって、防シワ加工がされていたことを紹介、
また、シャツ生地メーカーの雄:Thomas mason の生地の中に、「journey」と言う防シワ加工された生地シリーズがある事も紹介したかと思います
今回は、新しく「Canclini」社(カンクリーニ)が出している防シワタイプのシリーズ「voyager」
バンチを提供してくれた生地屋さん曰く、「journey」よりも良いとのこと。
では、早速・・・
今回手に入れた、新生地バンチ(嬉) と、ピックしたカンクリーニ
ちょっとヴィンテージぽい濃淡のあるブルーのドビー柄。以前買った、Dries van noten のピンクのシャツ地を思い出し、もしかして色違い?と即決め
が、、後から見ると、似てるけど違った
さておき
今回のデザインは、最近ずっとやってるような気のする「サファリデザイン」。
テストサンプルとしては、色々と試さないと意味が無いので、なるべく縫いの多いタイプにする。
ただし、トレンドのオーバーサイズが製品作成でも続いたので、改めて、基本に戻りシルエットをタイトで作成。ついでに、自分のボディパターンを見直す、よいタイミングに。
細かいポイントとしては、ポケットを、「吊り上げ型」に。
パターン上で、ポケットをストレートに作り、そのまま水平に置くと、着用時には肩下がりの分ポケット端が斜めに下がる(間違いという訳ではない)
これを着用時に、フラットに持っていこうとすると、パターンを斜めに吊り上げなければいけない
アーミー系のアウターなどは、四角いポケットをそのまま斜めに角度をつける。
最近はギア系、アーバン系デザインが流行っているが、そちらもそういうデザインが多い
ただ今回は、ジャストサイズの「カミチェリア」的なシャツ、
あくまで、クラシカル、テイラー系のテイストでいくので、テーラードスーツのバルカポケットのイメージ。
ということで、ポケット自身を歪める
目的は、ポケット自体にも「地の目」を通す事。今回の様なタックがある場合は特に大切。
こんな感じ
次に、縫製をちょろっと。
ノンアイロン系の生地の縫製は、なかなか難しい
表面に樹脂加工して、防シワにしている為、生地自体のハリ感が強く縫いが跳ね返ってくる
本体を縫う前に、試し縫いでミシンの糸調整。直線縫いで、このピリつき・・・汗
縫製面は、毎度の縫製なので割愛。
今回のポイントの「星留め」だけちょろっとフォーカス
まずは、肩と衿周り。
衿ぐりを閉じる前に星留めを入れると、始点、終点の玉留めがキレイに隠せるので、途中工程で入れてますが、
出来れば最後のまとめ作業で、ハンドワークはまとめたいところ・・・考えどころです
いやしかし、ドビー柄に埋もれとる・・・・
これも経験。ドビー生地に星留めは、あまりおススメしない方が良いかも(笑)
他にも カフス周り。
「星留め」は、糸の太さ、返し縫いによる表面の出す点の大きさで、表情が変わる。
今回 糸は細め:シルク糸30番9号 ミシン糸太番手
(穴糸の16号とかだと太過ぎるのでね・・・)
ドビー柄に埋もれるという事態に面し、少し大きめ(0.5㎜→1㎜)に出す方向に修正
ふんわりと返し縫いして、後に、アイロンで潰して、より大きく広げる
裏面の糸の出方も、ある程度均一にしたい所。
アイロンで潰すとこんな感じ
それと、 エルボーパッチにも。
袖縫って筒になった状態でも、中敷き引けば問題無く、ハンドワークできます
右と左で、 ハンドステッチと ミシンステッチの比較も考察
別布のレザー、スェードの切りっぱとかであれば、ミシンでもよいかな
ただこの生地は、エッジが跳ねかえって丸くなる感じが、この肘当てのミシンステッチに向いてないかなぁ
それと、胸のフラップポケット。
受けの方は、ダブルのミシンステッチ
アームホールは、定番の、ミシンステッチ×ハンド千鳥始末
という事で、
縫い上りはこんな感じ。
しわしわに見えますが・・・
通常の綿100%の縫い上りとは違い、生地自体のシワが少ないです
(綿100%の洗濯後のシャツをイメージしてもらえれば、なんとなく想像できるかな)
ボディに着せて、中身が入ると、生地が引っ張られて、よりシワも見えなくなります
ただし、一番最初に見せたような、縫いの跳ね返りが強いので、
前立てやポケット、本縫い&ステッチ部において「ピリつき」が いつもより出てしまっています
結構気を遣って縫っていますが、布が重なる所はなかなか抑えきれないですね
これは小生自身の技術的な問題もありますが、以前工場の人に聞いたときも、Thomas mason 「journey」の縫製のピリつきはある程度仕方ないと、
プレスでばちっと抑えると言ってましたので、やはり傾向として、仕方ない所かと思われます
ただし、ここからが「ノンアイロン」系の本領発揮をして貰う所。
この縫い上りの製品、少ないとはいえ、生地のシワがそこかしこに見られる状態
ここで、水で満遍なく霧吹きします
そして、約10分後。 乾くのも早いこの生地。
ドビー柄の凹凸と、糸自体の強撚感のお陰かな。
お。なんか綺麗になってる
後身は縫製部も少ないので、よりキレイ
生地部分は、殆どシワがとれて、すっきりしてますね
前身は、縫製部分が多いので、ピリつきが目立ちますが、背中や袖はかなり綺麗。
「ノンアイロン系」の肩書きは、伊達じゃないですね
今回、フロントに、「表前立て」、「フロントポケット」とデザインを入れましたが
通常、小生のシャツのデフォルトは、「裏前立て」で「ノーポケット」
この定番のドレスシャツタイプにしていれば、 霧吹きだけで、もしくは洗濯後そのままで、と期待を持たせてくれる出来かなと、感じさせます。
とは言え、縫いの集中するディテールはやはりピリついているので、
結局はアイロン仕上げは必要そうです
という事で、 やはり アイロン仕上げ
ただし、通常よりも大分楽なアイロン。生地自体にシワが殆ど無いので、
軽く伸ばしてあげつつ、縫製部にポイントを押さえて圧力をかけて上げれば。
通常10分位かかるアイロン仕上げが、3分で終わるような印象。
ちなみに、着用時の経過ではこんな感じ
朝一、軽いプレス仕上げして着用直後がこちら
そしてこちらが一日経過後
こんな日に限って、荷物の出荷作業がちょこちょこあり、いつもよりシワになりやすい状況
縫製部は、やはり肉体労働の汗(水分と温度)で少しピリつきがでてますね
一方で、生地自体は少しくたびれていますが、シワ線のようなものは出てないですね
という事で、もとい。
ノーデザインのシンプルなシャツであれば、一日ある程度綺麗に保たれる
ビジネスマンにとって、かなり嬉しい生地なのではないかと推測されます
canclini voyager おススメです の徒然でした