温故知新~アンティークシャツ~の徒然
温故知新:故きを(温)たずね、新しきを知る
「温」をたずねる、と読むのは、「温めなおす」=復習するという意が含まれているとの事。
デザインの世界、特にファッションでは、トレンドはぐるぐると回り、その時代にアジャストさせながら更新されていく
シャツデザインにおいても、
スタイリングからくるデザインの発想、ディテールからくる発想など
アイデアの出元が異なる事はあるにせよ、やはりアンティーク・ヴィンテージものの古着や、写真、絵などからインスピレーションを得るやり方は一つの王道と言えます
そこで今回は、
そのデザインソースになり得るようなアンティークシャツを購入したので、その時代ながらの独特なディテール・仕様を紹介したいと思います
1つ目は、1880年代フランスのリネン素材のスモックシャツ。グランパシャツとも言えるかな。
こういうシャツは当時、パジャマとして使用していたので、ビックシルエットのかぶりタイプが一般的。ボディはリネン素材、衿だけが綿素材で切り替えられています。
リネン素材と言っても、今の夏用リネンシャツのように薄手で清涼感があるタイプではなく、しっかりとした中肉な厚みがあり、重量感が感じられます。
リネンは、太古の文明時代から生活周りの繊維として一般的に使用されており(糸に加工しやすく(=安価)、耐久性がある特徴が故)、
1800年後半に産業革命が起きて、綿紡績が一気に普及したわけですが、それまでは、持ちがよい厚みのあるタイプが多かったのかなと思われます。
ではディテールを。
まず特徴的なのは、画像では分かりにくいのですが、脇接ぎが右にしかないという1枚仕立てであること
片方にのみしか接ぎが無いのは、単純に縫い工程を少なくしたかったからでしょう
当時はミシンもそれほど普及していない時代、手で全てを縫うのも当たり前だし、少なくとも修理は手縫い。
パジャマ使用のシャツをわざわざ、2面にするまでもない、と言う所かなと
前身には、胸部に大きなタックがはいり、ウェストでテープを叩き付けて留めて、下は振らしてゆとりを逃がしてます(その意味ではウェストマークされたデザイン)
袖は、身頃に対して垂直につき、そで下にはマチが、また、袖ぐりにはタックが入って、腕の可動域を上げてます
そして、後ろ首衿もと、袖口、ネックポイントに、シャーリングギャザーが施されています
よりゆったりとしたサイズ感になるようなデザインかとおもいますが、特にネックポイントのギャザー×切り替えテープデザインは、この当時は一般的なもの。
1900年前後のアンティークシャツを漁っていると、良く見受けられます
裏面から見るとこんな感じ
ただこのデザインが、装飾的なものなのか、機能的なものなのか、ちょっと分からないので、今度作って試してみたいと思います
袖口の開きは、剣ボロではなく、接ぎを生かしたスリットタイプ。ここら辺もパジャマ仕様て感じでしょうか
こちらはサイド裾部。接ぎの無い左脇には、切込みを入れてガゼット仕様、もちろん手まつりです。
また、刺繍は、赤糸のクロスステッチ。文字タイプ、東欧にこのタイプの刺繍が多い印象ありますね
別の1枚
こちらは、1910年代くらいだったかな
ブザムデザイン&バンドカラー(デタッチャブル用)なので、ドレスシャツです。素材は、ドレスシャツ用という事、また1900年代に入ってくると、やはり綿が圧倒的に多くなりますね
こちらもかぶりタイプ。前と後ろ両方に開きがあり、着脱を容易にしています
後ろ開きは面白いディテールで、剣ボロデザインのようで、1枚仕立ての行ってこい始末
背上にはヨーク切り替えが入り、ドレスシャツディテールのボウタイを留めるテープもついてます
上前と下前を2パーツ分けるよりも、1回で終らせる効率性を感じますね
そしてこのデザインのポイント
ブザムデザイン、2つの切り替えのあるこのタイプ良い感じで参考になります
開きの留まりは、独特なカンヌキ仕様、かなりしっかりしてますね
袖口は、やはり剣ボロタイプ、と思いきや、ここも後ろ開きと同じように、剣ボロ風行って来い始末
襟ぐりは、CUSHION neck band と版押しされた中布が一枚片側につき、デタッチャブルカラーを取り付ける際のスタッズ 底が肌に触れないような配慮が
スタンプも、アーミーぽい装飾性のなさが、カッコいいですね
脇接ぎは、巻き縫いタイプで、トップステッチが二重、三角のガゼットを裾に挟み込んでます
ということで
今回は、アンティークシャツのディテール・デザインを紹介させてもらいましたが
当時の環境や背景、技術、道具、ひいては思想を感じさせるモノ作りは、今でも新鮮で勉強になるモノばかり
また次のコレクションのデザインの参考にしたいと思います