”classico” ニューシルエット製作
昨今、メンズのドレスファッションのトレンドの変化が顕著になってきています
ボトムスで言えば、ローウェストタイト → ハイウェストタック入り(グルカパンツ)
それに伴い、シャツもタックインを前提としたブラウジングのある分量感のシャツが
好まれるようになってきました
もちろん、タイトシルエットがなくなる事は無いので、あくまで
ゆとりあるシルエットが、スタンダードに更に加わったという言い方が正しいのですが
そこで、 scylt でも、ブラウジングを前提とするような
少し分量感あるニューシルエットを クラシックディテールを盛り込んだ形で”Classico”
(クラシコ)という名前で作ろうかなと。
そこで今回のブログでは、新作と元来のオリジナルとの違いをパターンから解説したいと思います
まずは、インスタですでに投稿済ですが新シャツの写真
背中にナポリ風のたっぷり入ったギャザーが特徴です
今まで、scyltでは、3面ボディのシャツを筆頭に、基本タイトで
逆三角形になるようなスポーティなシルエットをベースにしてきました
ただ、今回はその逆。
ブラウジングを前提としたシルエット、ボディの土台パターンから考え方を変えていきます
下図が自分の身体用のボディのパターン製図(結構前に作ったものですが)になりますが、
薄赤線が 元のパターン線
濃青線が 今回の新クラシコパターン線 になります
まず ① 背中ヨーク下に+6㎝のギャザー分量を足し、ウェストの絞りを緩める
寸法的に バスト 102→107㎝ ウェスト 89→97㎝ ヒップ 100→105㎝
その際に、背中で分量をかなり多く取る分、前身は小さくする
② 肩線を内に入れる(肩幅を小さくする) 寸法 45→43㎝ 左右で1㎝
またさらに、このパターンから形にした補正で、前身AHを更に内側に入れています
パターンでは前身胸幅が不安だったので、あまり削らないようなAHラインを仮設定しましたが
ボディを組んでみるとまだ余裕があったので、内側に7~8ミリほど入れています
つまり
肩を広く見せる逆三角形のシルエット → 肩を小さく見せるボックスタイプのシルエット
ここが スポーティな印象 → クラシックな印象へと大きく変えるポイントになります
ただ、今までジャストだったパターンの肩を入れるという事は、
袖のパターンが同じでは袖山が肩にあたり、キツさで運動量が確保できません
そこで ③ 袖山にギャザーを入れます
下の製図は、袖山の展開です。袖ぐりの形状を変形させる事なく、一部に分量を足すには
中央の写真のように、ある一点を始点にして、切り開く(=展開という)作業を行います
元の袖山パターンにも、AHの寸法に対して4~5ミリのギャザー分量を入れておりましたが
今回は、さらに45ミリ追加 10㎝ほどのヨークの間に、 5㎜→50㎜ もの ギャザーを入れる事にしました
これは、運動量だけではなく、装飾的なデザインとしてクラシック感(貴族感)の目的もあります
さらに、この袖巾=ギャザー分量がより強調されるように、カマ底を上げて、AH自体を小さくします。
小さな口から、大きな広がりを出す方が、より演出的ですから。
ただ、50ミリが正しいどうかは、作ってみないと分からないので
このパターン製図の段階では、あくまで仮説。
縫い上げて検証して、補正すると。
洋服を作る作業もビジネス界の PDCAサイクルと変わらないのです
そして、
④ 肩ヨークを前身に食い込ます 袖山のギャザーを50ミリ入れるにあたり、そのギャザーを
ヨーク内に収める為にヨークを前に倒してくる (実際に必要性はない)
赤線 → 青線 AHで2㎝位移動させてます
また
④ 袖シルエット 絞り型 → 筒型 .(カフスで一気に絞る)
⑤ 袖口部にも ギャザー分量 元 約4㎝→ 約12㎝
⑥袖丈 +1.5㎝→+6㎝ わざと丈を長くし袖口でのブラウジング分量を増やす
というより、二の腕でアームバンド前提に。これもオールディーズのイメージですね
着用のスタイリングがはっきりしている方が、
パターンデザインを逆算しやすいですね
衿は今回 デタッチャブルカラー 取り外し式タイプの衿。
インスタでも紹介してますが、昔はフォーマルシーンで使用する衿やイカ胸パーツは
板のように固く作っていたので、取り外しタイプが重宝されていたわけです
2年前位に一度、コレクションピースで作った事はありましたが、改めて
日常使用できるデタッチャブルとなると、パターンの精度をより高めなくてはいけません
まずは、上記のように、一番下にある土台のバンドカラーと同じ形状で
デタッチャブルカラーのパターンを作り、長さだけ+2㎝ 外回りを足しましたが・・・
着用してみると、この同形状ではダメな事が分かりました
実際、ヴィンテージのデタッチャブルカラーでも以下写真の衿先端形状になっているものが多く、
デザインかと思っていましたが・・・
この形状こそが、襟ぐりのフロントにはおさまりが良い事が分かりました
ポイントは、製図パターンに記載した黄色の矢印ライン、襟ぐり先端の上がり角度です
身頃に縫い付けられる衿パターンでは、土台線から約1~1.5㎝位の立ち上がりで
身頃の襟ぐりラインに沿ったラインになりますが、
デタッチャブルカラーの場合、身頃の襟ぐりラインに縫い付けられずに離れてる為、
台衿はより直線的なラインを描き、フロントで、先端が「クロス」されフラットにならないのです
そこで、パターンの先端部を急角度つけることで、フロントをフラットに出来ると。
ヴィンテージのパターンの多くが、先端に急激な角度を付けている事が身をもって分かった次第なのでした
なお、デタッチャブルカラーの留め方は、フロントとバックの2カ所で留めるタイプが殆どで
土台衿の後中央に、ボタン穴を開けます
ヴィンテージでは、ここにスタッズボタンをつける事が多かったようで、
デタッチャブルカラーにも同様の穴を作り、スタッズを貫通させることで留めつけます。
事実、当時は前述したように、衿は板のように固かったので、それが一番良い方法だったでしょう
ですが、今回scyltでは
スタッズボタンにするとどうしても凸部分が強過ぎて、
表衿にまで響いてしまいそうだったので(ネクタイすれば緩和されますが)
デタッチャブルカラー側に、10ミリボタンを付け、土台衿側の略比翼ボタンに差し込む仕様にしました
これならば、首にボタンが直接触れる事もなく、また、表衿側に凸部が当たることがありません
と言うような仕様面を諸々クリアしたところ
デタッチャブルカラーの着用感は、想像以上に違和感は有りませんでした
この仕様は、今後もっと広まっても良いとさえ正直感じています
衿だけを変えれば、翌日も新しいシャツを着ているかのように出勤できる(笑)
もしくは、衿を会社の机の引き出しに入れておいて、普段はバンドカラーでリラックスコーデ
商談の時だけ衿とネクタイをつける、と言う(笑)
最後に、カフス
袖口に分量感あるギャザーを作り、パフさせているので、
袖口はよりスッキリと細くなるイメージ
従来のカフス丈 65㎜ →75㎜ 大ラウンド×コーンタイプで口をキュッとさせます
2つボタン:英国風 か、1つボタン:ナポリ風?か・・・好みにもよりますが
小生の着用最終判断的には、2つボタンになりそうです
右手;1つボタン 左手:2つボタン どうでしょうか?
まぁ巷には、両手に腕時計付ける人もいますから、
周囲には、クラシックの顔をしておいて 実は・・
右手と左手のカフスが違うという隠れた「反逆」= ロック
良いかもしれません(笑)
という事で、今回は、ニューシルエットの”classico” シャツの紹介を、
元のオリジナルパターンとの比較を通して解説させて頂きました
折角ここまでこだわったのに、カフリンクスでなくてボタンなのが残念ですを
おっしゃる通りですね。その方が、クラシコの統一感、完成度が上がりますね。
最近こっち系のデザインしてなかったので、
カフスデザインも新しく考えようと、ビスポークの選択肢の新提案
としてアピールしたくなったのが正直なところです、反省です。