ツィードシャツ作成の徒然 ~裁断、芯、パーツ作り~
今回は、先日 代官山のセレクトショップ DF TOKYOさんの別注オーダーとして
イベント用に納品したLINTONツィード(CHANELがコレクションで使用することで有名な
英国の老舗メーカー)のライトアウターシャツの作成風景を一部披露したいと思います。
ちなみに、イベント風景はFBで詳しく書いておりますが、
https://www.facebook.com/scylt/
こんな感じで、
銀座のとあるビルの一室を借り切って、家具×ジュエリー×ウェア×カクテル 「大人の上質な遊び場」の提案として、2日間開催されました
やはり、「空気」て大切ですよね
同じ商品でも、見え方が変わりますね・・
それはさておき、このブログは、あくまでモノ作りの方で、進めようかと
まずは、仕上がりから。こんな感じ
いつものドレスシャツの仕様と違う所がいくつもあります
では早速、ツィードのシャツ作りの紹介へ
まずは素材。
いわゆるシャツ地とは全く違う性格の生地であることが、仕様の違いに反映されます
シャツ地は通常、綿であれ麻であれ、程度の違いはあるにせよ細い糸をタテヨコに用いて
コンパクト(高密度;目が詰まっている)に、織りあがっています
そのため、出来上がった生地は、地のしっかりした性質を持っています。
一方ツィードはと言えば、糸自体が太く、また様々な種類の糸状のモノを使用するので、地が厚く、密度は甘く織りあがっています
例えば・・・
ツィードと言えば、英国のHARRISツィードを思い浮かべる人が多いと思いますが、HARRIS社の特徴は、粗くドライなウール太番手糸をしっかりと織りあげるメンズライクな性格と言えます。
一方、LINTON社、他にも、MARIA(マリア、仏)、TOURNIER(トゥルニエ、仏)など有名ですが、彼らのツィードはエレガンスで華やか、レディス向きと言えます
それぞれが様々な、リボンヤーンと言われる、糸というよりもテープなどを用いてファンシーな意匠に磨きをかけています
ついでに、手元にあった、10数年前のMARIA tweed 以下写真
確か・・1メートル×10万円位(生地の値段感は、一般の人には分かりづらいと思いますが、例えば、上代10000円前後の量産商品を作るようなメーカーは、1000円を超える生地はまず使いません)した記憶があります(小生が購入したわけでは無いです)
20ミリ以上の巾のリボンテープも使ってますね、、、ほんとにヤバイ生地です
このように、紹介された写真のツィードを見て分かるように
様々な種類の糸を用いて甘く織りあげられたツィードは、生地の地の目が動きやすく、型崩れしやすい性質を持っているのです
特にバイアス(斜めの裁断面)地の目は、生地が伸びダレが発生しやすくなり、
また、一本の糸が抜けるだけで縫い代が減り、接ぎの強度が弱まるために、「滑脱」と言われれる接ぎのパンクが発生しやすくなります
そのため、こうしたツィードを使ったアイテムを作る際には、「芯」による生地の、部位の補強作業が大切になり、型崩れやパンクを防ぐようにするわけです
では次に、
その「芯」の使用方法
では早速、最もポイントとなる 裁断&芯貼り後の画像から
表地ツィードと別布スェードの2種類の生地があります。マットに黒いパーツはスェードそれ以外の黒い部分は、芯を貼った箇所になります。
部分的に貼ったパーツや、全面に貼ったパーツなどがありますが、
まずこの時点で、 通常のシャツ地では行わないpointが幾つもありますね
1:縫い代分量: 通常のシャツ地の倍くらい、確保しておきます。縫製最中、パーツを動かしたりしているだけで端がほつれ、5ミリくらいあっという間になくなってしまう為、ゆとりの確保です
身頃だったら、通常、5~10ミリ、今回は25ミリほど、肩だったら、通常は5~7ミリ、今回は15ミリと。
2:芯貼り: バイアス(斜め)地の目になる部位は、伸びやすくなるので、芯を貼り寸法を固定させます→アームホールには端打ちテープ、肩には縫い代に沿ってストレートテープ(ツィード用の芯を裁断)、ヨークには今回全体に芯貼り(要検討)
ほぼジャケットの芯仕様です
ちなみに、ジャケットであれば、滑脱テープ(接着)や、接着タイプではないものを接ぎに噛ませて補強処理することが一般的です
ただ、シャツの場合は裏地で隠すことが出来ないので、あくまでも表に見えないように縫い代だけに芯を貼り、縫い代のほつれの防止とダレ・伸びの抑止をします。
3:別布スェード使い ツィード生地で全パーツをつくる事も可能ではありますが、ツィードは生地が厚く、縫い代が重なる接ぎ部分がこんもり膨らんでしまいます
そこで、見た目や着心地をスッキリさせる為に、①内背ヨーク ②内台衿 ③地衿(上衿裏) ④前立て裏 ⑤内カフス ⑥スリットパーツ(袖・裾)に、より薄い生地を使用しました。
特に、衿やカフスは、内回り、外回りと寸法差がありますので、内側に厚みの少ない生地を使用する事が大切になります
スェードにしたのは、肌触りとアウター感のupを狙った、デザイン要素ですね
④端始末 ロックミシンで端の解れ防止、ダレ防止
・身頃端 ・袖端:折り伏せ始末の中は、縫い代幅が少なくなりますので、ロックで端を留めておきます。 他にもポケット端とか、アームホール端も縫っている最中に伸びないように、先にロックを掛けておきます
一方、裾には、ロックはかけません。裾は、今回「三巻始末」にするので、逆にロックで固くなり過ぎないように、捨てミシン(ステッチ)で対応します
基本的に、ミシンは使えば使う程、ステッチは細かければ、細かい程、その部位を固くしていくので、着心地を良くするには、なるべくミシンを使わない方が良いのです。
なので、以前も触れていますが、「運針」の細かさが、シャツのクオリティを決めるような「蘊蓄」優先のモノ作りには、疑問が起こるわけです
では、パーツ縫製もみていきます
カフスの縫製。カフスは最も使用強度が求められる部位、地をしっかりさせるために、
表地、別布それぞれに、芯を貼ります。(エッジが膨らみ過ぎないよう、別布側は縫い代には貼っていません、ここら辺は、作者の考え方にもよると思いますが)
通常のシャツ地では、肌側(今回の別布側)には貼りません
縫製的には、内側を引っ張りながら、外回りに余裕を持たせる事
また、片側(別布)の縫い代をカット、段差を付けてよりエッジをすっきりさせることも大切です
ついでに、同じ理屈の衿の縫製も
まず、台衿
台衿は芯貼りを縫い代に跨ぎません(身頃に縫い付ける際にエッジを立たせる為)ので、
最初に細かめの針間で捨てミシン、ほつれ止めをしてから、台衿に縫い代をたたいて、台衿外側の上がりを決めます
上衿に関しても、
地衿側(スェード)を引っ張りながらつけ、表衿エッジの控え分、外回り寸を確保します
衿先が浮いているのが分かると思いますが、これが地衿を引っ張っている証拠になります
またもう一つ中間作業で、衿をロールさせながら、根本(台衿で挟む箇所)を粗く捨てミシン
これで、外回り寸の確保をさらに目指します
通常のシャツではこの作業は、内側へのロールと、地衿の内回り寸の余り分量の処理として行いますが、ツィードでは、外回りの確保がせめて出来れば・・という地厚素材への対処レベルにとどまってしまいます
縫いあがったら、台衿先端カーブ部の縫い代をジグザグミシンでカットして、カーブの縫い代の溜まりをすっきりさせ角が立たないように、一手間。通常のシャツ地なら、アイロンでつぶせますけど、ツィードは少しでも重なりを減らしたい所です
という事で、衿完成。
このまま続けていくと、まだ長くなりそうなので、ここらへんで第一弾にしておこうかな・・