シャツ縫製 丸縫いの流れ
今回はシャツ縫製の流れを解説
今回のシャツは、お客様のオーダーシャツの2枚目の作成風景です。生地はTHOMAS MASON GOLD LINE ロイヤルツイル
1:生地地直し ツイル=綾織は斜めに織りの線が走っている組織。この組織は斜行しやすいので、地直しを念入りに。ツイル目と反対方向にアイロンをかけ、タテ地が通るように整形していきます。(写真:生地端に切り込みを入れて、糸の逃げ場所を作ってあげます)
2:裁断 今回のシャツは2面ボディですが、芯などを入れると20パーツ近くあります。また今回のお客様のシャツは、左右の肩傾斜が違う為、全てのパーツをそれぞれ裁断します(汗)
3:縫製 衿 & カフス 僕の場合、衿とカフスを最初に。やはり、「顔」となる衿や、「締め」になるカフスを綺麗に仕上げるため。芯の処理、ロール具合など、工程と神経がかかる、ここから始めます。カフスは時計に合せて、左右の幅を変えます。時計によって、その差が変わりますね。(ジャガールクルトとパネライでは差寸自体で1.5㎝位変わるでしょうか)
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縫製にて、内側ロール。カラーキーパー用の当て布は白で配色に。
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衿のロール感
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カフスも内に少しロール:内輪差と手首に向かい締める為
4:縫製 袖ケンボロ & カフス 袖は、まず剣ボロからはじめ、筒状に縫製→折り伏せ始末→カフスと合体。袖を筒状に折り伏せ縫いするのは、「縫いにくい」という意味で骨が折れます
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剣ボロ下は、白で配色。衿裏とリンク
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左右で袖口幅が違います
5:縫製 背ヨーク & 後身頃 背ヨークにネームを叩き、後身頃とドッキング。
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ヨーク下側に少しいせ(ギャザー)を入れ、立体的に
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ネームは4点留め。角が立たず、軽い仕上がり
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中央にタック&ギャザーで腕の運動量を確保
6:縫製 前身頃(前立て&裾始末)& 後身 前身と後身のドッキングは、2枚の肩ヨークに前身を挟み込む形ですが、これにも何種類かやり方があります。僕の場合は、大体1回で縫い繰り返します。(時に、肩ヨークにステッチがないシャツがありますが、このやり方でしか出来ません)
裾始末は、3つ巻きラッパというアタッチメントを使う方法もありますが、バイアスになるカーブラインが伸びて波打ってしまうので、避け気味。代わりに、アイロンで三巻を作ってから、裏から三巻端にコバステッチを叩きます
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「裏前立て」始末 & 肩の接ぎ部分を少しカーブ、肩から首の「登り」
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裾始末:1㎜コバステッチ用のアタッチメント使用
7:縫製 衿 & 身頃 台衿に身頃を挟み込みます。ここも神経を使います。台衿のカーブと襟ぐりのカーブの違い、そしてステッチによる表裏の縫い留め。技術と慣れが必要でしょうか。ここも地縫い返し、もしくは一回で挟み込むやり方の2通りあります。
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地縫い返し
8:縫製 身頃脇縫い & ガゼット & 袖取り付け 袖は、身頃を脇縫い(折り伏せ縫い始末)してからの「後付け式」。脇
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袖は針でピン打ちで準備
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袖の縫縫製後、裏返し。アームホールの折り伏せ始末の準備
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ネームと同じ点留め。デザインディテール。下を絞った方が良いな・・・
9:縫製 アームホール始末 ステッチで叩かず、ハンド工程をいれた手まつり(すくい縫い)で軽さを出します
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ハンドによる縫い代のまつり縫い始末
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まつり縫い始末:裏側 縫い代真ん中のステッチはギャザー寄せ用の捨てミシン、後で取ります
10:縫製 ボタンホール&ボタン付け 約4㎜厚の極厚白蝶貝 × 細く軽め(糸密度)のボタンホールで周囲の生地を必要以上に硬くしないように
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4㎜の極厚の白蝶貝
11:縫製 グリカン作成 剣ボロ開き口、テンションかかる部分に補強糸ループ。シルク糸の少し太目で撚りの甘い番手で作成。絹の持つ生成りの色味と艶がアクセントに
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グリカン
12:仕上げ アイロンで仕上げ
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出来上がり
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後身頃。生地のドレープ感も良い